カンボジアには、国の成り立ちと人々の暮らしに深く関わる「水」を祝う、国中で最も熱気に満ちたお祭りがあります。それが「ボン・オム・トゥック(Bon Om Touk)」、通称「水祭り」です。クメール正月、プチュンバン(お盆)と並ぶカンボジア三大祭りの一つであり、国内外から数百万の人々が集まる壮大なイベントです。
この記事では、カンボジアの自然、歴史、文化が凝縮された水祭りの魅力について詳しくご紹介します。
ボン・オム・トゥック(水祭り)とは?
ボン・オム・トゥックは、仏暦12月の満月の日(太陽暦では例年10月下旬~11月頃)を中心に、首都プノンペンをはじめ全国各地で3日間にわたって開催されます。この祭りは、主に3つの大きな意味を持っています。
- 自然への感謝:雨季の終わりを告げ、川の水位が下がり始める時期にあたり、豊かな恵みをもたらしてくれた水と、満月(月の神)に感謝を捧げます。
- 豊作の祈願:これから始まる乾季の農作業の成功と、来年の豊作を祈ります。
- 歴史の継承:かつて強大な力を誇ったアンコール王朝時代のクメール水軍の訓練を再現し、その栄光を称えるという意味合いもあります。
ユニークな自然現象と祭り:水祭りの時期は、巨大な湖「トンレサップ湖」からメコン川へ流れるトンレサップ川の水流が、逆流から順流へと戻る劇的なタイミングにあたります。この自然のダイナミズムが、祭りをさらに特別なものにしています。
祭りを彩る3大イベント
水祭り期間中は、昼も夜も多彩なイベントで盛り上がります。
1. ボートレース(Om Touk)
祭りのハイライトであり、最大の呼び物です。龍をかたどった色鮮やかな長いボートが、数十人の漕ぎ手たちの力強い掛け声とともに水しぶきを上げて進む様子は圧巻の一言。プノンペンではトンレサップ川が競艇場と化し、各州や地域を代表するチームが名誉をかけて競い合います。岸辺は応援する人々で埋め尽くされ、国中が熱狂に包まれます。
2. 灯篭流しと花火(Bandaet Pratip)
夜になると、祭りは幻想的な雰囲気に変わります。政府機関や企業が製作した巨大で豪華な電飾船(灯篭)が、音楽とともに川面をゆっくりと進みます。きらびやかな光が水面に反射する光景は非常に美しく、祭りのフィナーレには盛大な花火が打ち上げられ、夜空を彩ります。
3. 満月への祈りと「オーク・アンボック」(Sampeah Preah Khae & Ak Ambok)
満月の夜には、月の神に感謝を捧げる儀式が行われます。この時、祭りのシンボルともいえる伝統的なお菓子「オーク・アンボック」が食べられます。これは、炒ったお米を臼でついて平たくし、ココナッツの果肉やバナナと混ぜたもので、素朴で香ばしい味わいです。人々はこのお菓子を月に供え、家族や友人と分かち合います。
訪れる際の注意点
水祭りは非常に魅力的なお祭りですが、注意点もあります。
- 大混雑:期間中、特にプノンペン中心部は国内外からの観光客で大変混雑します。ホテルの予約や交通手段の確保は早めに行うことをお勧めします。
- 安全管理:人混みではスリや置き引きに注意が必要です。貴重品の管理は厳重にしましょう。
- 開催状況:国の事情(洪水、安全上の問題、国王の逝去など)により、祭りが中止または規模縮小となる年もあります。渡航前に最新の情報を確認することが重要です。
まとめ
ボン・オム・トゥックは、カンボジアの人々の水への畏敬の念、自然と共に生きる知恵、そして国の誇りが一体となった、まさにカンボジアの魂を感じられるお祭りです。もしこの時期にカンボジアを訪れる機会があれば、ぜひその熱気と興奮、そして幻想的な夜の美しさを体験してみてください。

