ベトナムのテトとは
「テト」(Vietnamese New Year / Tết Nguyên Đán)は、旧暦の元日に祝われるベトナム最大の祝日です。「テト(Tết)」は「お祭り」、「グェン・ダン(Nguyên Đán)」は「新年」を意味し、ベトナム人にとって一年で最も大切な行事として、古くから受け継がれてきました。テトの時期には人々が故郷に帰り、家族や親族と新年を祝います。
テトの歴史的背景
テトの起源は今から約3000〜4000年前にまで遡ると言われるほど非常に古く、のちの中国による支配を受けるよりも遥か昔から、ベトナムの地で独自の農耕祭事として存在していました。このように、古来よりベトナム固有の農耕文化や宗教観が形作られたテトは、単なる暦の切り替えにとどまりません。農民にとって「旧年の終わりと、新たな命が芽吹く収穫年の始まり」を意味する最大の節目であり、自然の神々や先祖の霊に感謝を捧げる精神的なルーツとしての背景を持っています。
- 旧暦に基づく祝日:テトの日付は旧暦1月1日と定められているため、西暦では毎年日付が変わります。通常1月下旬から2月中旬頃にあたります。
- 長期休暇:テトの前日にあたる大晦日から数日間が国定祝日として制定されており、多くの企業や個人商店が休業します。ベトナム全土が一斉に休みとなる一年で最大の連休です。
- 春節との共通点:テトは中国の春節と同じ時期に祝われ、赤や黄色の飾り付けやお年玉など共通の慣習も見られますが、ベトナム独自の文化も多く持っています。
- テト攻勢:テトはベトナム戦争(1968年)の重大な転換点となった歴史的舞台でもあります。当時、アメリカ側は「ベトナム人にとって大切なテトの期間中に、ベトナム側は攻撃をしてこない」と考えていました。しかし、北ベトナム軍とその解放戦線はこの裏をかき、アメリカ側に奇襲攻撃を仕掛けました。これがテト攻勢であり、泥沼化した戦争を終結へと向かわせる最大の引き金となりました。
テトの過ごし方
テトは大晦日の準備から始まり、元日以降数日間にわたってさまざまな行事が行われます。
- 大掃除と飾り付け:数週間前から家の中を隅々まで掃除し、北部では桃の花、南部では梅の花や金柑の木など、縁起物を飾って繁栄を願います。
- 年始の挨拶:ベトナム語でチュックムン・ナンムイ(Chúc mừng năm mới)は「明けましておめでとう」を意味する新年の挨拶です。
- 最初の訪問者(ソンダット / Xông đất):最初に家を訪れる人の運気が家族の運勢を左右すると言われており、相性の良い親族などをあらかじめ招く独特の風習があります。
- 家族の団らんと伝統料理:最も大切な過ごし方は、故郷で家族と一家団らんを楽しむことです。緑豆や豚肉を入れた伝統的なちまき(北部:四角いバンチュン(Bánh chưng)、南部:円筒形のバインテット(Bánh tét))などを囲んで新年の繁栄を祈ります。
- 寺院への参拝:元日の早朝、家族そろって新しい服を着て寺院へ参拝し、新年の幸福や健康を祈ります。
- 先祖への供養:先祖の霊を迎えるため、お墓参りをして感謝を伝えます。また、家の中では祭壇に五果盆(マンムークア / Mâm ngũ quả)と呼ばれる5種類の果物を供え、線香を焚いて新年の平穏を祈ります。
- お年玉(リーシー / Lì xì):赤い封筒に入れたお年玉を子供や年配の家族に贈る習慣があります。赤は幸運と繁栄を象徴する色とされています。
観光・滞在時のアドバイス
テトの時期にベトナムを訪れる際、知っておくと便利なポイントをまとめました。
- 店舗の休業に注意:テトの期間中は多くの個人商店や飲食店、市場が休業します。一部のレストランや大型スーパーは営業していることもありますが、時短営業になることもあるため、事前に確認することをおすすめします。
- 交通機関の混雑:テト前後は帰省ラッシュにより飛行機や長距離バスが大変混雑します。移動の予定がある場合は早めの予約が必須です。
- 観光スポットの混雑:テト期間中は寺院や観光スポットが大変混雑します。早朝に訪れるか、混雑を避けた計画を立てましょう。
- 2月のベトナム観光:2月は北部では肌寒い季節ですが、南部は比較的過ごしやすい気候です。テトの華やかな雰囲気を楽しむ絶好の機会でもあります。

