🌸 ベトナムの旧正月「テト(Tết Nguyên Đán)」とは?
テト(Tết Nguyên Đán)は、ベトナムにおいて最も重要で盛大な祝祭日であり、旧暦の正月を祝う伝統行事です。 漢字では「節元旦」と表記され、「節=祝日」「元旦=最初の日」という意味を持ちます。中国の春節と同じく、旧暦1月1日を中心に、その前後を含めた約1週間にわたり全国規模の休暇と祝賀が行われます。
📅 テトの時期はいつ?
ベトナムでは毎年、旧暦(太陰太陽暦)に基づいてテトの日程が決まるため、太陽暦(西暦)では毎年日付が変動します。
一般的には1月下旬から2月中旬の間に元日が巡ってきます。ベトナム政府から正式な休暇期間が発表されると、官公庁・学校・企業はそれに合わせて大型連休に入ります。この期間はベトナム全体が「テト休み」という特別な空気に包まれます。
📜 テトの歴史と文化的背景
テトは中国の春節文化の影響を受けつつも、ベトナム固有の宗教・祖先信仰・農耕文化が融合した祝日です。 もともと農民にとっては「旧年の終わりと新しい収穫年の始まり」を告げる重要な節目であり、祖先や神々への感謝を捧げる日でもありました。
「新年を清らかに迎える」ための準備や儀式が非常に重視され、年末には大掃除や墓参り、年越し料理の準備が慌ただしく進められます。家々には赤い飾り付けがなされ、街中が華やかに彩られます。
🌼 テトに行われる主な風習と習慣
- 感謝と祈り: 祖先の祭壇に「五果盆(Mâm ngũ quả)」と呼ばれる5種類の果物を供え、線香を焚いて新年の平穏を祈ります。
- 伝統料理: 北部では四角い「バインチュン」、南部では円筒形の「バインチェット」という、緑豆や豚肉を入れた伝統的なちまきを作ります。
- 縁起物の花: 北部ではピンク色の桃の花、南部では黄色の梅の花(ホアマイ)や金柑の木を飾り、繁栄を願います。
- お年玉(Lì xì): 赤い封筒に入ったお金を目上の人から子どもや若者へ贈り、幸運を分け合います。
- 初日の挨拶(Chúc Tết): 親戚や近所へ挨拶回りを行い、「Chúc mừng năm mới(あけましておめでとう)」と声を掛け合います。
👨👩👧👦 テトと家族の再会
テトは家族と過ごすことが最も大切とされており、多くのベトナム人が遠方の仕事先や留学先から故郷に戻り、家族団らんの時間を持ちます。 これにより、年末年始には大規模な「帰省ラッシュ」が発生します。ベトナム人にとってテトに実家へ帰ることは、精神的な結びつきを確認する非常に重要な意味を持っています。
🎆 現代におけるテトの変化
近年では都市化やライフスタイルの変化に伴い、祝い方も多様化しています:
- 大都市での大規模なカウントダウン・花火イベント。
- 伝統的な帰省の代わりに、家族で国内外のリゾートへ旅行するスタイルの増加。
- SNSやメッセージアプリを通じた新年の挨拶交換。
- 多忙な家庭向けの、市販のテト料理セットの活用。
📉 旅行者・ビジネス向けの注意点
テト期間中にベトナムを訪れる、あるいはビジネスを行う場合は以下の点に注意が必要です:
- 店舗の休業: 多くの個人商店、レストラン、市場が数日間閉まります。近年は早めに営業再開する店も増えていますが、事前の確認が推奨されます。
- 交通・宿泊: 航空券やバスのチケットが数ヶ月前から埋まり、価格も高騰します。
- インフラ: 銀行や公的機関が休みになるため、海外送金や行政手続きが停止します。
⚔️ 歴史的背景:テト攻勢(Tet Offensive)
テトは平和の象徴ですが、近代史においては大きな転換点となった出来事もありました。1968年のテト期間中に行われた「テト攻勢」です。
当時の停戦慣習を破る形で、北ベトナム側が南ベトナムの主要都市へ一斉に奇襲を仕掛けました。軍事的な勝敗以上に、このニュースが世界に流れたことでアメリカ国内の世論が反戦へと大きく傾き、ベトナム戦争の行方を決定づける歴史的な節目となりました。
📌 まとめ
テト(Tết Nguyên Đán)は、ベトナムにおける文化・家族・信仰の核心をなす祝日です。 時代とともに形を変えながらも、「家族を大切にし、祖先を敬い、清らかな心で新しい年を迎える」という本質的な精神は、今もベトナム人の心に深く根付いています。ベトナムを理解する上で、テトを知ることはその文化の根源を知ることと同義と言えるでしょう。

