🕌 ムハンマド昇天祭(イスラ・ミラージュ)とは?
ムハンマド昇天祭(アラビア語で「アル=イスラー・ワ・アル=ミラージュ」)は、イスラム教の預言者ムハンマドが体験した一夜のうちの神秘的な旅と、天界への昇天を記念する日です。イスラム暦(ヒジュラ暦)第7月であるラジャブ月の27日の夜に行われる、イスラム教において最も神聖な行事の一つです。
🌌 二つの奇跡:イスラーとミラージュ
この出来事は、大きく分けて二つの段階で構成されています。
- イスラー(夜の旅): 天使ジブリールに導かれ、伝説の白馬「ブラーク」に乗り、メッカからエルサレムのアル=アクサー・モスクへ一瞬にして移動した旅。
- ミラージュ(昇天): エルサレムから天界へ昇り、歴代の預言者たちと出会いながら、最終的に神(アッラー)の御前に至った旅。
📜 礼拝(サラー)の起源
この昇天の際、ムハンマドは神から直接、イスラム教徒の最も重要な義務である「1日5回の礼拝(サラー)」を授けられたと伝えられています。このため、この日は単なる奇跡の記念日ではなく、イスラム教徒の日常生活の根幹が決まった歴史的な転換点として重んじられています。
🎉 主な行事・習慣
- モスクでの集い: 信徒たちがモスクに集まり、昇天の物語を聴いたり、特別な説教(フトバ)を受けたりします。
- 夜通しの祈り: 深夜までクルアーンを朗読し、神への感謝と祈りを捧げる時間が持たれます。
- 家庭での祝い: 家族や友人と集まり、特別な食事やお菓子を分け合って喜びを分かち合います。
- 慈善活動: 貧しい人々へ食事を振る舞うなど、施し(サダカ)が積極的に行われます。
🌍 地域による多様な祝い方
世界中のイスラム圏で祝われますが、そのスタイルは地域ごとに特色があります。
- ライトアップ: 多くの国でモスクや街並みが美しくイルミネーションで飾られます。
- 子供への教育: 絵本や語り聞かせを通じて、子供たちに奇跡の物語と信仰の大切さを伝える機会とされます。
- 柔軟な過ごし方: 休日となる国もあれば、日常の中で静かに祈りを捧げる国もあり、文化的な多様性が見られます。
✨ 豆知識・聖地の繋がり
- この旅により、エルサレムはメッカ、メディナに次ぐイスラム教第3の聖地となりました。
- 昇天の出発点となった場所には、現在、黄金のドームが特徴的な「岩のドーム」が建っています。
- イスラム暦は太陰暦のため、西暦(太陽暦)で見るとお祝いの日付は毎年約11日ずつ早まっていくのが特徴です。
🎯 まとめ
ムハンマド昇天祭は、「信仰の力」と「神とのつながり」を再確認する大切な節目です。礼拝という日々の習慣が授けられたこの日を祝うことで、イスラム教徒は自らの精神性を高め、社会全体で平和と調和を祈ります。目に見えない精神的な成長を社会全体で尊ぶという点では、日本の成人の日とも通じる「節目」の意義を持っていると言えるでしょう。
🚀 七つの天界での出会い:預言者の系譜
ムハンマドは昇天(ミラージュ)の際、七つの層からなる天界を順に登っていきました。それぞれの階層には、イスラム教において重要な役割を果たす先駆者たちが待ち受けていました。この出会いは、ムハンマドが単なる一人の指導者ではなく、人類の長い信仰の歴史を受け継ぐ最後(封印)の預言者であることを象徴しています。
🌌 各階層で出会った預言者たち
ムハンマドは各天門で天使ジブリールに紹介され、預言者たちと挨拶を交わしました。
- 第1天:アダム(人類最初の人間・預言者)。ムハンマドを「義なる子、義なる預言者」と歓迎しました。
- 第2天:ヤフヤー(洗礼者ヨハネ)とイーサー(イエス)。いとこ同士である二人の預言者と出会いました。
- 第3天:ユースフ(ヨセフ)。彼は「世界の美しさの半分を与えられた」と形容されるほど、神々しい姿で現れました。
- 第4天:イドリース(エノク)。古代の知恵と知識を象徴する預言者です。
- 第5天:ハールーン(アロン)。モーセの兄であり、民を導く雄弁さを持った預言者です。
- 第6天:ムーサー(モーセ)。イスラエルの民を導いた偉大な預言者で、ムハンマドに対して深い敬意を示しました。
- 第7天:イブラヒーム(アブラハム)。イスラム教において「信仰の父」とされる最重要人物の一人です。
📜 礼拝回数をめぐるムーサー(モーセ)との対話
この旅のクライマックスで最も有名なのが、第6天にいたムーサーとのやり取りです。
神から最初、1日50回の礼拝を命じられたムハンマドが天界を降りてくると、ムーサーは「民にはそれは重すぎる、戻って減らしてもらうよう願いなさい」と助言しました。ムハンマドは何度も神とムーサーの間を往復し、最終的に現在の「1日5回」にまで軽減されました。このエピソードは、預言者同士の連帯感と、信徒に対する慈悲の物語として語り継がれています。
🌳 究極の境界「シドラの樹」
第7天を超えた先には、「シドラ(なつめやし)の樹」と呼ばれる、天使ですらそれ以上は進めない究極の境界があります。ムハンマドはここで、他の誰も見たことのない神の輝き(ヌール)を目の当たりにし、直接啓示を受けました。
✨ 深掘りポイント:なぜ彼らと出会ったのか?
- 共通の使命: 歴代の預言者たちがムハンマドを歓迎したことは、すべての預言者が「唯一神への信仰」という同じメッセージを伝えてきた仲間であることを示しています。
- 苦難の共有: 当時、メッカで迫害を受けていたムハンマドにとって、同じように苦難を乗り越えてきた先達との再会は、大きな精神的励ましとなりました。
- 伝統の継承: ムハンマドが最後にアブラハム(イブラヒーム)に出会ったことは、彼がアブラハムの正統な信仰を再興する者であることを強調しています。
🎯 まとめ
昇天の旅における預言者たちとの出会いは、「点」であった歴史が一本の「線」に繋がる瞬間を象徴しています。ムハンマドは過去の偉大な魂たちから祝福と知恵を授かることで、社会を変革する大きな自覚と勇気を得たのです。この物語は、今を生きる人々にとっても、「自分は歴史や社会の一部である」という自覚を持つことの大切さを教えてくれます。

